パッドとの運命的な出会い。64パッドを「楽器」として始める理由
みなさんは「パッド」という言葉を聞いて、どんなものを想像されるでしょうか。
まだまだこの言葉は一般的ではないので、画像を見ていただくと早いかもしれません。
こんな感じの押せそうなところが8x8の64個ある「64パッド」と分類される道具がこの話のメインテーマです。
画像を見ると、ああなんかこんなの見たことある、と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。
最近は「フィンガードラム」という言葉もちょっと有名になってきたので、ああ、フィンガードラムとかに使うやつでしょ、という感想をお持ちになられるかもしれません。
そのイメージは決して間違ってはいないんですが、ここで取り上げたいのはこれを「楽器みたいに演奏する」というテーマです。
こういうのは動画をご覧いただくのが一番早いでしょう。
こういう「64パッド」を使って、こんな演奏ができてしまうのです。
それはすごいかもしれないけど、別にそんな変なもの使わなくても、ギターとかピアノを練習したらいいんじゃない、と考えられたあなた。素晴らしい感性です。むしろこれは、そう感じられる方にこそオススメしたい道具なんです。
詳しいパッドのメリットはまたのちほどの記事で改めて語りますが、パッドというのは超大雑把に言うと「ギターとピアノのいいとこ取りをして、さらに小さくて、学びやすい楽器」なのです。
まず単純に、ギターやピアノより小さい。小さいけど、3オクターブ半の音が出せます(インターバルを4度に設定)
これは、一般的なエレキギターと同じか、ちょっと少ないくらい。MIDIキーボードなんかはサイズ次第ですが、同じ音域が出せるものよりかなり小さいです。
小さいは正義。スペースに余裕がない日本の住環境とも非常に相性がいい道具です。
また、基本の演奏方法が「叩く」なので、ドラムっぽい演奏とも相性が良いです。つまり、Padがあればドラムもベースもピアノもこれ一個で全部練習できる。(制約はあるけど、ある程度ならギターっぽいこともできる)
さらに言うと「音楽を学ぶ」「和声を学ぶ」時に、Padの構造というのがめちゃくちゃ相性がいいんですよ。これが「習得の早さ」にもつながって、そこがまた音楽初心者にもオススメしたい理由の一つ。
ただ、当然ながら新しい「楽器」なので、まだまだ人口は少なく、情報も限られています。
自分自身も、この道具に可能性を感じながらも、これをどう学び、どう活用したらいいのかを悩み続けていました。
そんな中で、ハードコア・パッドスタイルというものに出会ってしまったのです。この出会いが、自分の音楽人生の大きな転機になりました。これをきっかけにして、自分の中の音楽感が大きく変わりました。
俺は、パッドでの音楽演奏を究めていく人になるんや。そう決意するに値する出会いでした。
そして、自分なりの「パッド普及活動」の一環として、ここでパッドに関する記事をまとめていこうと決意したのです。
ちなみにこれからこのnoteでまとめていく内容は、『理系の料理』の音楽版を目指しています。
当時私が理系の料理という本を作ったきっかけは「塩コショウ:適量」という表現への不満からでした。適量が分からないからレシピを見てるのに、適量とか書いたらレシピの意味がないじゃないか、と。
同じような感覚で言うと、音楽というやつは「センスがある人がやるもの」(センスがなければ手を出してはいけないもの)みたいなイメージを持っている人が多いような気がします。そして、そのイメージを変えたいんですよね。
もちろんそりゃあプロを目指すんだったら、なんらかのセンスは必要かもしれません。ただ、個人が音楽を楽しむという目的であれば、必要なのって「好き」であることだけだと思うんです。
この連載で目指すのは「日常で音楽を楽しむ」ことです。
料理でたとえるならば、プロの料理人になるんじゃなくて、日々の生活で料理を作ることを楽しめるようになること。それが出来るようになることを目指すイメージです。
バンドを組んでライブをやるとかを目指さないし、DAWでかっけえ音楽を作ってYouTubeで発表することが目標でもない。
もちろん楽しくなっちゃったらバンドとか作曲とかをやってみるのも悪くないと思うんですが、別にそれが「正解」ではありません。基本的に、自宅で一人で楽器を演奏して楽しむこと。これができるようになることが目標です。
というか、パッドとDAWを少し覚えたら、「バンドっぽいこと」「作曲っぽいこと」だってけっこう簡単にできるんですよ。演奏も作曲も結局は地続きで、ちゃんと「音楽」を学んでいけば本質的には同じことだと気がつきました。(なので、連載の中ではDAWのごく基本的な使い方なんかも触れていきたいな、と思っています)
そして、私は『理系の料理』の著者なので、多くの人が「理系」という言葉でイメージされるような目線で、こういう話を詳しく掘り下げていくつもりです。
「こうやればできる」じゃなくて「なぜそうなるのか」
最初に、構造や理由をきちんと理解することを目指します。これができれば「暗記」の量を圧倒的に少なくすることができます。
音楽でいうと「コードネームの仕組み」がわかれば、コードネームを見ただけで「なにを弾けばいいのか」がすぐにわかります。そしてもちろんそれをわかった上で「センス」によってアレンジすることだって可能です。
そういうことを踏まえて、このシリーズでは理系の料理とおなじように、主に以下のような方々に向けて話を進めていきます。
- そもそも音楽とか楽器が得意じゃなかった人
- 音楽は未経験で全然わからないという人
- かつてギターやピアノに挫折した人
- かつて音楽をやってたけどやめてしまった人
- 音楽の仕組み、構造に興味がある人
「2020年代という時代で」「個人が」「趣味として」音楽を楽しむための最善の手法は、パッドを使った音楽学習である。自分はそう確信しています。
ここまでのことを踏まえて、今後の連載では、以下の順序で解説を進めていく予定です。
- パッドという楽器の特徴と利点
- パッドを楽しむために必要な知識と環境(初歩的な音楽理論)
- 実践的な練習方法と上達のコツ
音楽理論って言葉、なにか難しそうに聞こえるかもしれませんが、趣味として音楽を楽しむ程度であれば、大した理屈はありません。
覚える分量で言えば、九九を丸暗記するより遥かに少ないです。
超大雑把なことを言えば「コード」なんて「4個」の仕組みを覚えればだいたいの演奏は出来るんです。あとはその基本形を応用するだけです。
ギターのように「Fコードが弾けるようになるまで1ヶ月」といった苦労も必要ありません。「Fコード」を押さえて音を鳴らすだけなら10秒でできます。
さらに言えば、最初の最初のステップであれば「2個の形」を理解すれば、その応用だけで「それっぽい演奏」を楽しめます。
大切なのは「なぜそうなるのか」の理解です。たとえば、Cというコードを丸暗記するだけでは、次にDというコードが出てきたときに一から覚え直しになります。しかし、Cというコードの仕組みを理解していれば、同じ考え方でDというコードも作れるようになります。
もちろん、実際に演奏するときには、仕組みだけでは処理が間に合いません。ある程度は体で覚える必要があります。
料理で「味付けには重量の1%の塩を入れる」と覚えればだいたいどんな料理にも応用できますが、日々の料理で毎回「こいくち醤油は塩分比率が15%くらいだから、200gの肉には小さじ2.5くらいの醤油を入れればちょうどいい」とかって毎回計算するのは大変です。何回も繰り返すなら、よくあるパターンを覚えた方が早いし、よくあるパターンを繰り返していれば自然に覚えてしまうこともできるでしょう。
これと同じように、理屈が分かったからといって「すぐ上手に演奏できるわけではない」ということは理解しておく必要があります。
「塩の分量」の仕組みを知っていれば、それはあらゆる料理に応用できます。同じように、コードの仕組みが理解できていれば、それはあらゆる場面で応用が出来る知識として身に付きます。
そうやって「ちゃんと理解する」ことができれば、あとはもう自力で音楽の道を切り開いていくことができるようになるはずです。(また、その次の段階としてハードコア・パッドスタイルを学んでいくこともオススメです)
だいたいこんな感じでこれから連載を書いていく予定です
第1部:パッドの魅力
- パッドという楽器の特徴と利点
- 従来の楽器との違い
- 必要な機材と予算の目安
- 想定される練習時間と上達の見通し
第2部:パッドを楽しむために知っておくべきこと
- 基本的な音楽理論(九九程度の難易度で解説)
- パッドの基本的な使い方
- 音楽ソフトウェアの基礎知識
- 練習環境の整え方
第3部:パッドを楽しむための練習方法
- 段階的な練習プラン
- つまずきやすいポイントとその解決法
- 実践的な演奏テクニック
- 応用と発展の方向性
第1部は完全に無料で公開する予定ですが、2部以降は気に入っていただいた方に向けて一部有料で提供していく予定です(うまくまとめられたら、書籍化も検討しています)
40歳を過ぎてパッドに出会い、今はじめて自分がやりたかったことができるようになりつつあります。
アドリブとか、いったいどうやってやったらいいかわからなかったけど、やっと光明が見えてきています。
この喜びを、読者の皆様と共有できることを目指して、これから記事をかいていこうと思います。