どんな曲も定番進行とそのリハモで説明できる
曲を丸ごと覚えず、共通点と差分に分ける
新しい曲を覚えるとき、すべてを曲ごとの別物として扱う必要はありません。すでに弾ける曲と比べて、同じところと違うところを分けて見ます。
共通する進行を見つけられれば、その部分は何度も覚え直す対象ではなくなります。新しい曲では、知っている形に対して何が変わっているのかを覚えればよいからです。
たとえば1625は、I–VIm7–IIm7–V7という4つのコード進行です。これを一つずつのコードとしてではなく、1625というまとまりとして、あらゆるキーやボイシングで考えずに弾けるところまで持っていく。すると「1と6と2と5」という4項目ではなく、一つの形として扱えるようになります。
スタンダード曲を1曲覚える 🎹パッドでジャズのボイシングを覚える
サビに1625が2回出てくるなら、そこは既知の形として捉えられます。「ここは2がII7に変わっただけ」と見れば、曲全体を新しく暗記するのではなく、既に知っている進行との差分へ注意を向けられます。
この見方は、一曲の中にも使えます。曲の中で同じ形が繰り返されているなら、同じものをまとめて覚えます。未知の音の並びも、既知のパターンの組み合わせとして捉え直せば、独立した知識を一つずつ暗記するより扱いやすくなります。
曲の中でどの機能がどれだけ使われているかを見る方法もあります。多くの曲では、トニック、サブドミナント、ドミナントが2:1:1の割合に落ち着くとされています。すべての曲をこの割合に当てはめるというより、曲の中で役割の違う部分を区別するための見方です。
一方で、共通点だけを見ていればよいわけではありません。Cherokeeを覚えられるようになったのは、他の曲と共通する進行を差し引き、残った部分だけを覚える対象にできたからです。曲が違えば、共通しない部分も残ります。その差分が、その曲で新しく覚える内容になります。
この差分が見えると、曲を覚える速さにも違いが出ます。後から取り組む曲ほど、すでに知っている進行や形が増えているため、一曲分を丸ごと覚えるのではなく、違う部分だけを覚えられるからです。覚えた曲が増えるほど、次の曲で確認する範囲は小さくなっていきます。
曲どうしを続けて弾き比べると、この共通点と差分は耳と手でも確かめられます。Brazilian RhymeとFeel Like Makin’ Loveでは、複雑に見えるパッシングコードを、4度進行やドミナント7thのリハモとして見直せます。コードネームを個別に追うだけでなく、どこが同じ働きで、どこが曲固有なのかを比較できます。
理論を知っていることと、演奏で使えることは同じではありません。ある曲で覚えた同主調のバリエーションが、別の曲の一箇所と同じ形だと気づいたとき、知識だった理論が自分の演奏で使えるものになります。進行の理屈が分かれば、コピーも音を再現するだけではなく、「なぜこの音を選ぶのか」という判断を含むようになります。
弾けるようになった曲を、後から学び直すこともできます。先に手を通した曲へ、後から覚えた進行やフレーズを当てはめると、弾いていた当時には見えなかった使い方に気づけます。新しい曲だけでなく、以前弾いた曲も、共通する形を見つける場所になります。
即興が出てこないときも、練習量を増やす前に、覚える量を減らせないかを考えられます。共通する進行をまとめ、曲固有の差分を見つけ、別の曲で同じ形を弾いてみる。そうすると、曲を覚えること、理論を使うこと、練習の対象を選ぶことが一つの流れとしてつながります。